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「捕獲性筋疾患」と「たこつぼ心筋症」

「汎動物学」では、たとえば動物の「捕獲性筋疾患」とヒトの「たこつぼ心筋症」とを、同一の視座から捉える。

UCLA教授バーバラ・N・ホロウィッツ及びジャーナリスト キャスリン・バウアーズ著「人間と動物の病気を一緒にみる」(インターシフト)によれば、捕食者につかまえられた動物は血中のアドレナリン濃度が危機的なまでに急上昇し、筋肉に障害が起きることがある。心臓の筋肉がやられた場合は、血液を送り出す心室の動きが妨げられ、うまく機能しなくなる。これを「捕獲性筋疾患」という。シカ、齧歯類、鳥類、小型の霊長類など、捕食者の獲物にされる、ひどく神経質で臆病な動物の場合は死に至ることがある。ヒトの場合には、愛する人を亡くしたとき、仲間から見捨てられ孤立してしまったとき、ギャンブルで大事な貯金をすっかり失ったとき等、脳内に強烈な辛い感情が生じると、生命を脅かすただならぬ身体的変化が心臓内に生じる場合がある。血管のつまりも血栓もないが、患者の左心室が電球の形のように奇妙にふくらみ、健全な収縮が起きず、心臓がけいれん発作に陥る。「たこつぼ心筋症」と呼ばれる。「捕獲性筋疾患」と「たこつぼ心筋症」とは、ほぼ間違いなく関連がある。臨床医学の場で診断のむずかしいケースや治療法の混乱に対処できる視座、あらゆる種の生物を区別なく扱う、種の壁を超えるアプローチを「汎動物学」と呼ぶ、という。

危機的な状況に陥ったとき、血中アドレナリン濃度が急上昇し、闘争か逃走かの実行準備を整えるのは、動物であろうとヒトであろうと同じことだ。そして、その副産物として、筋肉に障害が発生することが有り得るというのも同様だろう。進化の過程を経てきた生物に、捕獲性筋疾患とたこつぼ心筋症のように、共通の現象が発生することはむしろ当然で、もしも、まったく異なった現象が発生するとしたら、そこには特別の事情が存在しなければならない。しかし、そのようなものはほとんどの場合存在しない。一方で、医学と獣医学とを区別するのは人為的な都合に過ぎない。人為的な区分けが、全体感の中での適切な認識を阻害している現状がある。汎動物学の立場とは、個人が、自分が何者なのかを考えるとき、進化の系統樹の端に位置するホモ・サピエンスのことを思い、宇宙138億年の歴史の中の地球のことを思うことが、ときに必要になるようなものと、整合的だ。

テーマ : 文明・文化&思想
ジャンル : 学問・文化・芸術

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