同一にして無関係

DT1978Woman with a Rake, Jean-François Millet
Woman with a Rake, Jean-François Millet, The Metropolitan Museum of Art

草をかき集める若い女性は無限個のレベルⅠ並行宇宙に無限個存在するのだろうが、どのような宇宙においても重ね合わせ状態をとることはない。しかし、仮に重ね合わせ状態をとるとしても、レベルⅠ多宇宙が実現される限り、その上で実現されるレベルⅢ並行宇宙はすべて、レベルⅠ多宇宙と事実上同一で、無視できる。その意味でレベルⅠとレベルⅢの多宇宙は統一される、という。

マサチューセッツ工科大学教授マックス・テグマーク著「数学的な宇宙」(講談社)によれば、量子カード実験で、カードは少しだけ傾いていて、表が出て100ドルを手にできる確率は3分の2だとする。レベルⅠ多宇宙が存在すると考えると、この場合、空間のはるか彼方にある無限個の惑星に無限個のあなたのコピーが存在していて、それらのあなたがまったく同じ実験をしようとしていることになる。著者は、これらのあなたと実験装置のコピーを構成しているすべての粒子を全体として記述している波動関数に、シュレーディンガー方程式を適用した。その結果、まず、波動関数が収縮するとすると、レベルⅠ多宇宙全体に関して、ランダムな結果が一つ得られる。その空間にある3分の2の惑星ではあなたは喜んでいて(これらを「喜惑星」と呼ぼう)、3分の1の惑星では悲しんでいる(これらを「悲惑星」と呼ぼう)。一方、波動関数が収縮しないとすると、実験後には空間全体が異なる状態の量子的重ね合わせになっている。重ね合わせられる各状態は、無限大の空間にある無限個の惑星の3分の2は喜惑星、3分の1は悲惑星であるような状態[の無限個?のセット]だ。ところが実は、これらの状態はすべて互いに[、そしてレベルⅠ多宇宙とも、]区別できないことが分かる。エヴェレット解釈は、レベルⅢ並行宇宙が現れることを特徴とするが、それらは結局区別できず、無視して構わないことになる。空間が無限大の広がりを持ち、レベルⅠ多宇宙が実現される限り、その上で実現されるレベルⅢ並行宇宙はすべて事実上、同一で、したがって無視できる。その意味で、レベルⅠとレベルⅢの多宇宙は統一される。

著者によれば、無限個のレベルⅠ並行宇宙からなるレベルⅠ多宇宙が実現される限り、その上で実現されるレベルⅢ並行宇宙はすべて事実上、レベルⅠ多宇宙と同一だから、レベルⅢ多宇宙は無視してかまわない、ということだ。しかし、その前に、そもそも現実的な宇宙を考えるならば、人とカードも含めて、ほとんどが巨視的物体からなる個別宇宙において、それらの物体の重ね合わせが実際に起こることはほとんどない。よって、レベルⅢ多宇宙は理論的にはあり得ても、実際上はあり得ない存在だ。そのような意味でも、無視して構わないのではなかろうか?これは、波動関数は決して収縮しないという考えに引きずられたほとんど宗教的な重ね合わせ宇宙論から、より現実的だが直接の検証は困難な無限個宇宙論にシフトするようなものでもあるが・・・。それにしても、無限個のレベルⅠ並行宇宙に存在する無限個の私のコピーとこの私自身との関係はいかなるものだろうか?彼らは精神と肉体において同一だ。一卵性双生児よりも近い。しかし、互いに影響を与えることは永久にない。その意味では無関係だ。

テーマ : 文明・文化&思想
ジャンル : 学問・文化・芸術

孤立した状態の特質

DT1854Bridge over a Pond of Water Lilies, Claude Monet
Bridge over a Pond of Water Lilies, Claude Monet, The Metropolitan Museum of Art

橋も睡蓮も光のなかに確固として存在し量子的重ね合わせ状態をとることはない。巨視的物体が量子的重ね合わせ状態をとらない理由は、それが大きいからではなく、光子や空気分子等を含む周囲の世界の影響からそれを完全に孤立させることが困難だからだ。

マサチューセッツ工科大学教授マックス・テグマーク著「数学的な宇宙」(講談社)によれば、「密度行列の非対角成分」をゼロにできたなら、あなたは、「両方の場所に同時に存在する状態」を「いずれかの場所に存在するが、どちらであるかは分からない状態」に変化させたこと、すなわち、波動関数を収縮させたことになる。シュレーディンガー方程式から示されることだが、周囲と相互作用しない孤立した系では、これらの厄介な数は決してゼロにならない。[すなわち、波動関数は収縮しない。]ところが、著者は、注目している物体とそれに衝突する粒子を全体として一つの孤立系として考え、シュレーディンガー方程式を使って何が起こるかを計算した。数時間後、密度行列の非対角成分が非常にゼロに近くなっており、波動関数が収縮したかのような結果が出た。巨視的物体が二つの場所に同時に観測されない理由は、物体が大きいからではなく、周囲の世界から物体を孤立させるのが困難だからだ。屋外に置かれたボウリングの球は、1秒間に約10の20乗個の光子と10の27乗個の空気分子に衝突されている。二つの場所に同時に存在するボウリングの球があったとしても、その存在に気づく前に、量子的な重ね合わせの状態は壊されてしまう、という。

人でも、猫でも、ボーリングの球でも、仮に何もない部屋に置いたとしても、それでも通常は大量の光子や空気分子等に衝突されていて、決して孤立してはいない。よって、一般的には、巨視的物体が、量子的な重ね合わせ状態をとることはない。だから、レベルⅢ多宇宙が実際に存在するとは考えられない。これは深夜の思考にちょっと似ているかもしれない。日中の余計な騒音から遮断されて孤立して、自由に思いを巡らしているときには、思考の重ね合わせも起これば、斬新なアイデアも浮かぶ、ように感じられる。しかし、翌朝、日常の生活に囲まれつつ昨夜のアイデアを思い起こしてみると、それは現実には使えないものだ、ということがままある。特別の環境においてなら特別のことが起こり得る。しかし、それは日常の条件や制約のなかに持ってきてみると霧のように消えてしまう。

テーマ : 文明・文化&思想
ジャンル : 学問・文化・芸術

レベルⅢ多宇宙は存在するか

DT719Houses on the Achterzaan, Claude Monet
Houses on the Achterzaan, Claude Monet, The Metropolitan Museum of Art

ヨットが手前側に進んでくる並行宇宙もあるかもしれないし、奥の方に進んでいく並行宇宙もあるかもしれない?対象物が、それを構成するすべての粒子について、二つの重ね合わせ状態をとったとすると、宇宙が二つの並行宇宙に分裂したかのように見える。このような量子的並行宇宙のことをレベルⅢ並行宇宙、それらをすべて集めたものをレベルⅢ多宇宙と呼ぶ。

マサチューセッツ工科大学教授マックス・テグマーク著「数学的な宇宙」(講談社)によれば、ヒュー・エヴェレット三世は、波動関数は決して収縮しない、と主張した。私たちの宇宙の波動関数は観測が行われるか否かには関係なく、常にシュレーディンガー方程式に従って決定論的に変化する、とした。著者は思考実験を紹介している。まず、底辺が完全にとがったトランプのカードを、テーブルに完璧にバランスをとって立てる。あなたは、カードが表を上にして倒れる方に100ドルをかける。目を閉じ、カードが倒れる音がしたら目を開き、賭けに勝ったかどうかを確認する。初期状態は左右対称なので、終状態もそうでなければならない。つまり、カードは両方向に同時に倒れ、重ね合わせの状態になる。もし波動関数が表に倒れたカードだけを記述していたなら、あなたは喜んでいたはずだし、逆に、裏に倒れたカードだけを記述していたなら、あなたはくやしがっていたはずだ。波動関数は、あなたとカードを構成しているすべての粒子についての、二つの異なる配位の重ね合わせに変化する。たとえ波動関数は依然として一つで、その意味で量子的実在も一つであっても、事実上、私たちの宇宙は二つの並行宇宙に分裂したかのように見える。量子カード実験の終了時点で、あなたには異なる二つのバージョンが存在し、一方のあなたは他方のあなたと同じくらい、今認識していることをリアルに感じているが、他方のあなたに気づくことは決してない。波動関数が収縮しないとすると、私たちが認識しているおなじみの実在は単に氷山の一角にすぎず、本当の量子的実在のほんのわずかな一部を表しているだけだ。エヴェレットが発見した量子的並行宇宙のことを「レベルⅢ並行宇宙」、それらをすべて集めたものを「レベルⅢ多宇宙」と呼ぶことにしよう、という。

もしも、あなたとカードを構成するすべての粒子について、二つの異なる配位の重ね合わせが実現されるならば、私たちの宇宙は二つの並行宇宙に分裂したかのように見える、ということはあるだろう。しかし、それは思考実験の場合だけに許されることであって、現実の世界ではそのようにはほとんどの場合ならない。人はもちろん、カードのサイズでも、二つの異なる配位の重ね合わせが実現されることはない。それが実現され得るのは、量子レベルのミクロサイズの場合だけで、しかも、周囲の世界から完全に、空気分子や光子の影響からも、孤立した状態の場合だけだ。だから、レベルⅢ並行宇宙は単なる理論上だけの存在で、実際に存在する宇宙ではないだろう。だが、もし仮にレベルⅢ並行宇宙が存在するとするならば、たとえば、第二次世界大戦で連合国ではなく日本が勝利した宇宙があることになる。しかし、その日本には女性に参政権はないし、治安維持法が市民の自由な活動を監視し、学校では教育勅語を「奉読」している。そういう宇宙と比べれば、改正組織的犯罪処罰法が成立しても、まだこの宇宙の方がずっとましだということになりそうだ。

テーマ : 文明・文化&思想
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無理やりの方便

DP259921Study for A Sunday on La Grande Jatte, Georges Seurat
Study for A Sunday on La Grande Jatte, Georges Seurat, The Metropolitan Museum of Art

「画面の登場人物たちは、画家によって観測されたために一つの場所でのみ見つかっているのだろうか?」こんなことを街中で言ったら頭のおかしい人になってしまう。しかし、量子力学的にはまともな疑問となり得る。これに関しては、波動関数は恐らく収縮しないが、それでも波動関数が観測によって収縮すると思って計算するのは、近似としては非常に便利だ、ということを今や量子力学の教科書で明らかにすべきだ、という主張がある。

マサチューセッツ工科大学教授マックス・テグマーク著「数学的な宇宙」(講談社)によれば、エルヴィン・シュレーディンガーは、古典物理学による世界の記述を二つの点で変えた。1.[対象物の]状態は粒子の位置と速度ではなく、波動関数によって記述される。2.状態の時間変化は、ニュートンの法則でもアインシュタインの法則でもなく、シュレーディンガー方程式によって記述される。さて、「コペンハーゲン解釈」では、対象物が観測されていない間は波動関数はシュレーディンガー方程式に従って時間発展するが、観測されると一点に収縮し、その物体が一つの場所でのみ見つかるようになる、とする。こうして、量子力学の病理的な重ね合わせ状態が都合よく取り除かれ、物体というのはある瞬間には一つの場所だけに見つかる、という私たちが慣れ親しんだ古典世界が説明される。しかし、コペンハーゲン解釈は、観測自体を記述する方程式を持たない。波動関数が正確にいつ収縮するのかを特定する方程式がない。論理的整合性もないかもしれない。なぜなら、私たちの宇宙全体を記述する波動関数を考えてみると、私たちを決して観察することのできない並行宇宙の人からの観点からは、この波動関数は決して収縮しないはずなのだから、という。

波動関数が「観測」によって収縮するという主張に関しては、「観測」の定義が問題になるし、観測するとなぜ収縮するのかということの説明も必要になる。観測の主体は人間だけなのか?他の動物も含まれるのか?ロボットはどうなのか?並行宇宙の宇宙人はどうなのか?人間だけだとするならば、なぜ他の主体は許されないのか?普遍的なはずの物理法則が人間だけを特別扱いするというのは不可解だ。また、観測すると、どのようなメカニズムで波動関数は収縮するのか?ということもある。これらについて、明確で合理的な回答はないだろう。波動関数の収縮という解釈には、物理の世界には似合わない無理やりの方便という疑いが付きまとう。

テーマ : 文明・文化&思想
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証拠としての「微調整」

DP130999Cypresses, Vincent van Gogh
Cypresses, Vincent van Gogh, The Metropolitan Museum of Art

実際にすべてがうねるような現象はこの地球上では見られない。しかし、どこの並行宇宙にも見られないとは断言できない。私たちの宇宙は優しく生命の存在を可能にするように高度に微調整されているように見える。ローマ法王であれば、それは神がそのようになさったからだと言うだろう。しかし、レベルⅡ多宇宙説は、そのような無限個の多宇宙においては、あらゆる可能性が実現されるのだから、人間が存在し得る宇宙の出現もまた確実だ、と説明する。

マサチューセッツ工科大学教授マックス・テグマーク著「数学的な宇宙」(講談社)によれば、私たちの宇宙は生命の存在を可能にするよう高度に微調整されているように見える。たとえば、もし暗黒エネルギー密度が実際の値より一定以上大きかったなら、銀河はまったく形成されなかった。反対に、一定以上小さかったら、私たちの宇宙はビッグクランチと呼ばれる劇的最後を迎えていた。電磁気力が実際の値より一定以上弱かったなら、太陽が爆発していた。一定以上強かったら、炭素や酸素などの安定だった原子が放射性となり、崩壊してしまった。電子が実際の値より一定以上軽かったとすると、安定な恒星は存在しなかったし、一定以上重かったとすると、結晶やDNA分子などの秩序ある構造は存在していなかった。陽子が実際の値より一定以上軽かったとすると、水素以外、安定な原子は存在していなかった。一定以上重かったとすると、陽子は中性子に崩壊してしまい、電子を捕まえて原子を構成することはできなかった。空間の次元が3より大きいと、安定な太陽系も安定な原子も存在できなくなる。空間の次元が3より小さいと、やはり太陽系は存在できない。時間の次元を変えてしまうと、未来予測を可能にする性質が失われてしまう。レベルⅡ多宇宙説は、微調整を次のように説明する。自然界のつまみのすべての値がどこかの宇宙で実現されるなら、人間が存在可能な宇宙の存在は100パーセント確実であり、しかも、私たちが存在し得るのは人間が存在可能な宇宙だけなのだから、観測の結果、私たちの宇宙がそのような宇宙であることを発見しても、何ら不思議ではない、という。

一見すると、私たちの宇宙は高度に微調整されているように見える。しかし、レベルⅡ多宇宙説は、何者かによる微調整を想定しない。無限個のレベルⅠ多宇宙を含むレベルⅡ多宇宙では、あらゆる可能性が実現されるので、人間存在が可能というきわめて特殊な条件もどこかの個別宇宙で必ず実現されることになる。私たちが存在し得るのはそのような宇宙だけなのだから、その宇宙を観測して、ずいぶん人間に都合のいい条件が充足されていると感じたとしても、不思議ではない。しかし、レベルⅡ多宇宙説によれば、私たちが観測できる宇宙とは、必ずそのような特殊な宇宙であるしかない、ということだ。微調整を司る何者かは不要で、代わりに無限個の宇宙の存在が想定されている。「微調整」はむしろレベルⅡ多宇宙が存在することの証拠となる。さて、トランプ大統領の周辺で大統領選中にロシアのスパイと接触があった人物が数名存在するということは単なる偶然ではありえない。そこには特殊な事情と何らかの意思があったと強く推定される。レベルⅡ多宇宙と違って、この人間社会ではあらゆることが無限回試行されるわけではないから、きわめて特殊な事態が発生すれば、そこには必ず誰かの意思があったと言うしかないということになる。こちらも証拠としての「微調整」だ。

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