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意識させて

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The Shelton with Sunspots, N.Y., Georgia O’Keeffe, The Art Institute of Chicago

高層ビルは動かない。さほど興味を示さずに、人々はその前を足早に過ぎ去っていく。あるいは中に入っていく。私たちは、動かない物体よりも、動く生物の方をより迅速かつより正確に検知する能力を備えている、とされる。

カリフォルニア大学教授ドナルド・ホフマン著「世界はありのままに見ることができない」(青土社)によれば、進化心理学者ジョシュア・ニュー、レダ・コスミデス、ジョン・トゥービーは、人間が「動いているものを監視する」システムを進化させたと述べた。彼らは、変化盲の実験を行って自分たちの仮説を検証した。被験者は何も映っていない画面を四分の一秒眺めてから、複雑な風景の写真を見た。それから再び何も映っていない画面を眺めてから同じ写真を見たが、一点だけ重要な変更が施されていた。物体が一個除去されていたのだ。そして被験者がその変更に気づくまで、その手順が繰り返された。被験者は動かない物体(植物、風車、家等)より動く生物(ヒトや動物)の変化を、平均して一秒から二秒すばやく検知した。さらに、動く生物の変化については10回に1回しか変化を見逃さなかったのに対し、動かない物体の変化に対しては3回に1回見逃した。つまり私たちは、動く生物の変化をより迅速かつ正確に検知できるということだ。あなたは、シャンプーをオレンジ色のボトルに詰めて売っていたとしよう。そして一人の買い物客が店に入ってきて、青いボトルに入った他社のシャンプーを探していたとする。オレンジ色のボトルに彼女の注意を向けさせるにはどうすればよいのか?彼女が備えている、動いているものを監視するシステムに訴えかければよい。たとえば、ボトルにネコやシカの絵が描かれたシールを貼ればよい。それほど目立たないようにするには、動物をそっくりそのままこれ見よがしに提示することはやめて、目、手、足、顔などの身体部位を描けばよい。「これは目である」というメッセージは、そこにはその目を持つ動物がいて、それに注意を向けることには価値があると忠告するメッセージでもある、という。

動かない物体は、捕食者ではないし、被食者でもない。多くの場合、危険をもたらすことも、食料を与えてくれることもない。一方、動く生物は、突然襲ってくる恐ろしい捕食者かもしれないし、すぐに逃げてしまう美味しいご馳走であるかもしれない。私たちが、動く生物をより迅速かつより正確に検知できるというのは、子孫を残すために必要な特徴の一つであったろう。昔、クマに出会ってしまったら死んだふりをしろと言われたのは、動かないことでクマの注意を引かないようにしようというものであったろう。それでもクマが近づいてきてしまったら、もはや逃げることもできないというところがこの方法の弱点だ。敵対する相手と直面してしまったときには、闘う、逃げる、死んだふりをするという選択肢しかない。台湾は今、中国からの軍事的脅威の拡大に直面している。台湾を香港のように統一したいという中国政府に対して、台湾政府は、政治的に死んだふりはできないし、物理的に逃げることもできない。闘っても相手の軍事力の方が総合的に上だ。そうなると、単独ではたとえ軍事的に勝利はできなくても、いざとなれば相手に相当に致命的な損害を与え、それは中国権力者の失脚を招き得るということをあらかじめ示して、馬鹿なことは考えるなと事前に強く警告しておくしかない。同時に武力による統一のようなことは米国を中心とする国際社会が絶対に許さないということを、中国政府に強く意識させておくことになるだろう。

テーマ : 文明・文化&思想
ジャンル : 学問・文化・芸術

異なる方法

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The Policeman, Joan Miró, The Art Institute of Chicago

この絵の場合には例外的現象が起こるかもしれない。ユニークさが際立っているからだ。しかし一般的には、ニューロンの「側方抑制」は、視野内のありふれた特徴の顕著性を抑え、まれな特徴の顕著性を高める。一方、「復帰抑制」では、目は、当面のターゲットが持つ固有の特徴が多く見いだされる領域のみを探索し、同じ個所を二度探索することはまれにしかない、とされる。

カリフォルニア大学教授ドナルド・ホフマン著「世界はありのままに見ることができない」(青土社)によれば、脳の後頭に位置するV1領域の神経活動は、顕著性と、目的に基づくその変更に相関する。近傍のニューロン同士は、視覚世界内の近傍の地点を示す。よってV1領域のニューロン全体によって、視覚世界の組織分布的顕著性マップが構成される。ニューロンは色などの特徴に積極的に反応し、近傍のニューロンもその色に反応している場合それらのニューロンを抑制する。この側方抑制は、視野内のありふれた特徴の顕著性を抑え、まれな特徴の顕著性を高める。オレンジ色を見つけるなどといった内因性の目的は、その目的に関わる特徴に反応するニューロンの活動を高めることで、顕著性マップを変更する。自然選択は、効率的な探索ができるよう私たちを形作った。目は、当面のターゲットが持つ固有の特徴が多く見いだされる領域のみを探索する。同じ個所を二度探索することはまれにしかない。この便利なトリックは、「復帰抑制」と呼ばれている、という。

視覚の中のありふれた特徴の中には恐ろしい捕食者も美味しそうな被食者もいないはずだ。顕著な特徴のところにこそ捕食者が待ち構え被食者が潜んでいる、かもしれない。それを明らかにするために側方抑制が必要になる。捕食者を避けようとする場合も、被食者を捕まえようとする場合も、何度も同じ場所を探索していたのでは素早く目的を達成できない。捕食者はいつどこから襲ってくるか分からないし、被食者は先に見つけなければ逃げられてしまう。勝負は一瞬で決まってしまう。そういう事情の中で、復帰抑制というメカニズムが発生したのだろう。ヒトの場合、入学試験の時に、同じ問題のところを何回もさまよっているようでは、合格は難しい。一つの問題にこだわってノーベル賞級の新発見がひらめいたとしても、それは評価の対象にはならない。単なる時間の浪費になる。ところが、現代の刑事は「復帰抑制」を抑制している。たくさんのテレビドラマが教えてくれる。刑事が犯罪現場に何度も足を運ぶというのは、逃げた犯人の逮捕は一瞬の勝負ではないからだ。現場に残されたあらゆる手掛かりを見逃さないことが犯人逮捕には必要であり、そのためには何度も現場に立つ必要があるということだろう。異なる課題には異なる方法での対応が必要ということだろうか。

テーマ : 文明・文化&思想
ジャンル : 学問・文化・芸術

少数の

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The Poet’s Garden, Vincent van Gogh, The Art Institute of Chicago

私たちは風景全体を同じような高解像度で見ているような気がしている。しかし、実際に高解像度で見ることができるのは視野の中心を取り巻く360分の2度のみだ。ところが、眼球は「見てジャンプし」を1秒間におよそ3回繰り返すので、いつも視野全体を高解像度で見ていると思い込む、とされる。

カリフォルニア大学教授ドナルド・ホフマン著「世界はありのままに見ることができない」(青土社)によれば、私たちの目は1億3000万個の光受容体を持ち、毎秒数十億ビットの情報を集めている。目の神経回路は、質の低下をほとんど招かずに、数十億ビットの情報を数百万の単位に圧縮することができる。次に目の神経回路は、数百万ビットの情報を、視神経を介して脳に伝える。しかし、視覚的注意を得ようとする競争に勝てるのは、そのうちの40ビットにすぎない。網膜は視野の中心により多くの光受容体を備え、周縁に向かうにつれその数が減少していく。だから、高解像度で見ることができるのは視野の中心を取り巻く二度のみだ。腕を伸ばして見たときの親指の幅が、一度に相当する。なぜ私たちのほとんどが、視野全体を高解像度で見ていると思い込んでいるのか?その答えは、絶え間ない目の動きにある。眼球は「見てジャンプし」を1秒間におよそ3回繰り返す。私たちは、何かを見るたびに、細部に富んだ狭い視野領域を通してみているのだ。よって、普通は視界がぼやけることはない。だから私たちは、一度にすべてを細部に至るまで見ていると、当然のことのように思い込んでいる、という。

進化の過程では幾つかの可能性があったはずだ。一つは、網膜の全体にわたってたくさんの光受容体を備えるというものだ。この場合、見てジャンプを繰り返す必要がない。大規模な設備投資のようなものだ。しかし、これでは、ほとんど使われない光受容体が生じてしまう。無駄な維持費も発生するだろう。もう一つは、網膜の中心付近にだけより多くの光受容体を備えるというものだ。この場合、見てジャンプを繰り返さないと全体を高解像度で見ることができない。光受容体については小さな設備投資だけで済ませ、別に、焦点を移動させる仕組みにも設備投資するようなものだ。結果として、進化の過程で後者が選ばれた。「視野の中心2度の光受容体」のような対応は、ヒトの社会においても観察される。10月4日、総選挙をまじかにして、自民党の表紙を取り換えるように、岸田内閣が発足した。しかし、国民の見る目は厳しく、発足時の内閣支持率は45%でここ20年余りで最低だ。首相を含めて閣僚は21人。世の中の問題には際限がない。長期の懸案事項があり、新しい問題も次々と発生する。一方、本当に優秀な閣僚候補の数は限られている。数十名もいることはあり得ないし、いたとしても、全員を任命したら総理大臣の管理能力を遥かに超えてしまう。そうなると、少数の優秀な閣僚を重用して、複数の担当業務を持たせ、国家が直面するありとあらゆる難題に取り組んでいくという方法しかないことになる。

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心掛ける

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The Millinery Shop, Edgar Degas, The Art Institute of Chicago

婦人用の帽子を見て、色がきれいだとかデザインが洒落ていると感じる人は私たちの中の多数派だ。しかし、同時にまったく別の感覚を併せて感じる少数派の人がいる。「共感覚能力」というものを知ることで、私たちが実在をありのままに見ているという信念のくびきから脱することができる、とされる。

カリフォルニア大学教授ドナルド・ホフマン著「世界はありのままに見ることができない」(青土社)によれば、人類の四パーセントは共感覚者であり、それ以外の人々とは大きく異なる知覚世界で生きている。「色字」共感覚者は、文字や数字に色を見る。味覚・触覚共感覚では、味覚のおのおのに、手で触ったときに感じられる三次元の形状が結び付けられる。共感覚者マイケル・ワトソンは、スペアミントの経験について、<背の高いガラス製の円柱のようなもの>と説明している。共感覚経験の多くはあいまいな想像力や貧弱な概念化の産物などではなく、親指をハンマーで叩いたときと同じくらい直接的で説得力あふれる純然たる知覚なのだ。共感覚能力を知ることで、私たちが実在をありのままに見ているという信念のくびきから脱することができる、という。

私たちは普段実在をありのままには見ていないのかもしれない。共感覚者は例えば、特定の味覚と同時に、存在しないはずの特定の触覚をも経験している。しかし、日常の経験の繰り返しの中で、その特定の触覚は幻覚だと認識するようになるわけで、少なからざる試行錯誤によって、実在をより正しく知覚するようになっている。共感覚者でない多くの人々も、絶えず現実とのやり取りの中で間違いを訂正し、実在の知覚により近づくようになっているのだろう。だが、動物は仲間をだまそうとすることがある。コガラはタカが来たと鳴いて混群の仲間を退避させて、その間に餌を独り占めしようとする、という。ヒトの権力者は時に、自分の都合で、あるものをないと言い、ないものをあると言うことがある。例えば、森友学園の場合には、官僚による異常な忖度と公僕にあるまじき公的書類の改ざん

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見極め

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The Beach and the Falaise d’Amont, Claude Monet, The Art Institute of Chicago

聳え立つ断崖からは崩れそうで脆い感じを受け、下に広がる砂浜には軽くサラサラした感じを受ける。「クロマチュア」は、色と肌理の結びつきだ。それは適応度に関するデータを多量にコード化し、いかに行動すべきかを私たちに教えてくれる、とされる。

カリフォルニア大学教授ドナルド・ホフマン著「世界はありのままに見ることができない」(青土社)によれば、人間の目は、1000万種類の色を識別する能力を持つ。しかし、単色の区画などというものは、自然界にはまれにしか見られない。頻繁に見られるのは、「クロマチュア」と呼ばれる色と肌理の結びつきだ。この結びつきは豊かな構造を持ち、適応度に関するデータを多量にコード化し、より繊細な反応を引き起こすことができる。クロマチュアの雄弁さは、ブロッコリの表面の無数の突起やイチゴの滑らかさに見られるような、形に関する繊細な記述を含んでいる。そしてその記述は、つかむ、搾る、なでる、つねる、こする、そっと押す、はむ、嚙む、さする、キスする、抱擁するなどの行動を喚起するよう巧妙に作られている。クロマチュアは実在、つまり誰も見ていなくても存在する物体の材質や表面について御託を並べるのではなく、適応度をかき集めるにあたっていかに行動すべきか、何が起こると予測されるかを私たちに教えてくれる。それは革新的な技術であり、人間固有のインターフェースに内部に提示される、圧縮された適応度利得の表現だ。そして真実を隠蔽し、私たちが生き続けられるようにしてくれる、という。

単なる緑色だけよりも緑のブロッコリの表面の無数の突起のように、物体の色だけからくる情報よりも、色と肌理の両方からくる情報の方が明らかに情報量が多い。後者の情報を入手すれば、次にどのような行動をすればよいのか、無意識の内により的確な決断をすることができるようになる。しかし、そのようなクロマチュアが積極的に真実を隠蔽するものではないとしても、真実の獲得に真っすぐに向かわせるものではないとは言えるかもしれない。真実というものは必ずしもいつも簡単には入手できない。他者の言葉も、いつも真実を語っているとは限らない。だから、相手の表情や身振り・手振りをよく見て、過去の経緯や実績を思い浮かべ、いま語られている言葉以上の隠れた情報を自然と得ようとすることになる。それでも、フロリダ州の若い女性がフィアンセと米国内旅行中にDVにあい殺された(らしい)というようなことが発生する。彼は旅行から一人だけで戻ってきた。そして彼女の遺体がワイオミング州で発見された。彼はその後行方不明となっておりFBI等が現在捜索中だ。あるいは、米国共和党の知事や国会議員の多くは、学校でのマスク着用の義務化は国民の自由を制限するものだから反対だと声高に主張し、実際の効果としてはコロナの感染拡大防止に失敗している。従来からの干からびたお題目ではなく、事実として何が起こっていて、何が本当に必要なのかを、米国民は見極めなければならないようだ。

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