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カギ

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The Letter, Camille Corot, The Metropolitan Museum of Art

気力が低下しているときに辛い知らせを受けたりすれば、ショックはより大きく、耐え難いものになる。嬉しい知らせを受ければ気力が回復することもある。ものごとにはタイミングというものがある。プロバイオティクスによる効果は、マイクロバイオームが形成途上にある生後数年間、または抗生物質によって腸内微生物の多様性が低下しているとき、あるいは恒常的にストレスを受けているときに、より大きくなる、とされる。

UCLA教授エムラン・メイヤー著「腸と脳」(紀伊國屋書店)によれば、一般に認められている健康なマイクロバイオームの基準の一つは、多様性と、それを構成する微生物種の多さだ。自然の生態系と同じく、マイクロバイオームの多様性のレベルが高ければ攪乱に対する回復力は強く、低ければ弱い。また、微生物の種数が少ないと、(病原菌、ウィルス、腸内の病原性共生生物による)感染、粗悪な食事、投薬などによる攪乱に耐える能力が低下する。残念ながら、生後の三年間で確立された腸内微生物の多様性は、向上させるより低下させる方が簡単らしい。しかし、プロバイオティクスによる介入は、マイクロバイオータが生成する代謝物質を変えて、腸の健康に資することが知られている。プロバイオティクスによる介入が腸内微生物の健康に与える効果は、マイクロバイオームが形成途上にある生後数年間、また、薬効範囲が広い抗生物質に服用によって腸内微生物の多様性が著しく低下しているとき、あるいは日常生活で恒常的にストレスを受けているときに、より大きくなる、という。

健康のためには、腸内マイクロバイオームの構成が多様でなければならない。現代の都市住民のマイクロバイオームの多様性は、アフリカや南米の原住民と比べて低下している。そのため、特に、生後の数年間、抗生物質を利用した時、恒常的にストレスを受けているときには、プロバイオティクスの利用を検討した方がよいようだ。好き嫌いの激しい子供、ストレスで飲酒の量が多くなっている勤労者は特に、発酵食品とともにさまざまな種類の野菜を摂取することが望ましいようだ。昨日、テレビで発酵食品とアボカドの組み合わせを特集していた。多様性はいざという場合の、集団全体の、復活のカギだ。腸内マイクロバイオームの多様性、自然の生態系の多様性、そして議会での意見の多様性は、予想外の惨事が発生しないようにするための、そして予想外のことが発生した時には、バランス回復のためのカギとなる。

テーマ : 文明・文化&思想
ジャンル : 学問・文化・芸術

それにもかかわらず

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The Gulf Stream, Winslow Homer, The Metropolitan Museum of Art

波が荒くなってきたり、海面に三角形の背びれが見えたりしたら、今は何の被害もないとしても、それは危険が迫っている兆候だ。血液検査をして疾病の兆候を示す生物化学的証拠が検知されなくても、「前疾病状態」に陥っていることがある。ストレス等で身体が消耗し、腸内微生物と脳腸相関が全身性炎症の発現を媒介している状態だ。血中の炎症マーカーのレベルが上昇していることで分かる、とされる。

UCLA教授エムラン・メイヤー著「腸と脳」(紀伊國屋書店)によれば、「前疾病状態」ともいえる健康状態では、公式に何らかの病気と診断されることがない。血液検査をしても、疾病の兆候を示す生物化学的証拠は何も検知されない。しかし、全身性炎症マーカーなどの特殊なテストによって、いくつかの特徴的な異常が検出される場合がある。「前疾病状態」は、身体の消耗(アロスタティック負荷と呼ばれる)の結果とみなすことができ、小さなストレスを繰り返し経験したり、恒常的にストレスを受けたりすると次第に募ってくる。アロスタティック負荷が増大するにつれ、腸内微生物と脳腸相関は、全身性炎症の発現を媒介しはじめる。炎症が悪化すると、LPS、アディポカイン(脂肪細胞が生成するシグナル分子)、C反応性タンパク質と呼ばれる物質など、血中の炎症マーカーのレベルが上昇する。さらに憂慮すべきことに、慢性ストレスに起因する内臓反応と、高脂肪食に起因する内臓反応が組み合わさると、炎症が悪化する可能性がある。腸の漏れやすさが増し、マイクロバイオータの活動によって腸の免疫系が活性化される機会が増えるからだ。強いストレスを受けると、気晴らし食品に手を出しやすくなり、そのために脳のストレス神経回路の活動レベルが高まって、腸内の炎症が悪化するという悪循環に陥る、という。

日本の勤労者全員に対して全身性炎症マーカーのテストをすれば、ほとんどのヒトがストレスで「前疾病状態」にあるということになりそうな気がする。高級官僚は首相への忖度をいかに第三者に分からないように実現するかで恒常的にストレスを受けているだろう。その部下たちは上司からの筋の悪い無理難題をいかに実現するかで恒常的ストレスを受けているだろう。一般企業の社員は今月の目標をどうやって達成しようかと恒常的ストレスを受けているだろう。あるいは顧客からのクレーム処理で恒常的ストレスを受けているだろう。「ハケン占い師アタル」に登場するイベント会社課長の大崎結(板谷由夏)は上司と部下の板挟みで恒常的ストレスを受けているが、現実社会でも彼女のようなケースは決して珍しくはないだろう。一方、「釣りバカ日誌」の浜崎伝助のような存在は、今や映画やテレビドラマの中に存在できるだけで、低成長に喘ぐ現実社会ではすでに絶滅してしまっているだろう。それにもかかわらず、日本人の平均寿命は男女ともに80歳を超えている。

テーマ : 文明・文化&思想
ジャンル : 学問・文化・芸術

5パーセント未満

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The God of Good Fortune Jurōjin, Soga Shōhaku, The Metropolitan Museum of Art

寿老人は長寿を授ける神だとされる。しかし、誰もが彼に巡り合えるわけではない。ヒトはみな健康長寿を願う。しかし、アメリカでは、極めつきの健康な人は、全人口の5パーセント未満しかいない、とされる。

UCLA教授エムラン・メイヤー著「腸と脳」(紀伊國屋書店)によれば、「最適な健康」状態とは、身体、心、情動、精神、社会的な関係がまったく健全で、活力にあふれ、何事に対しても適切に行動し、高い生産性を維持している状態のことだ。いい換えると、ただ単にやっかいな症状を抱えていないとというだけでなく、人生に満足を感じ、楽観的で、多くの友人と交際し、仕事を楽しんでいるような人を指す。89歳になってランニングを始め、101歳でボストンマラソンを完走した、ファウジャ・シンなどはその好例だ。「ユーモアのない人生など無駄だ。生きるとは、幸福になること、そして笑うことだ。それ以外にはない」とシンはいう。アメリカでは、極めつきの健康な人は、全人口の5パーセント未満しかいないと見積もられている、という。

時計の誤差が年間5パーセントだったら誰も買いたいとは思わない。しかし、共通の何かを目指している人々の集団の中で上位5パーセントに入るのは至難の業だし、下位5パーセントに入るのも同じことだ。脳、身体、社会的関係が健全で高い生産性を維持しているヒトは、恐らく日本でも5パーセント未満だろう。老人の5パーセントではなく、青少年を含む全人口の5パーセント未満だけが極めつきの健康だとされる。それでも男女とも平均寿命が80歳を超えているのだから、大部分のヒトは何らかの問題を抱えながらも長く生きているということだ。それは、ヒトは多少の故障があっても何とか元気に生きていけるようにできているということでもあるだろう。そう思えば楽観的になれそうな気がする。

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分からないときは

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The Disillusioned Medea, Paulus Bor, The Metropolitan Museum of Art

ヒトは何かに惑わされやすい。しかし、迷いから覚めることもある。パーキンソン病を脳部位の疾患としてだけ見るのも迷いの一つであるかもしれない。腸内のマイクロバイオータの構成の変化がパーキンソン病の発症と関連している可能性がある。パーキンソン病の発症以前に、腸管神経系の神経細胞に変質が見られ、マイクロバイオータを構成するプレボテーラ菌の割合が低下していることが多い、とされる。

UCLA教授エムラン・メイヤー著「腸と脳」(紀伊國屋書店)によれば、世界中で700万人以上がパーキンソン病に罹患している。手の震え、動作の緩慢さ、筋肉の硬直、姿勢やバランスの悪さなどは進行したパーキンソン病の典型的な症状で、神経伝達物質としてドーパミンを含有する、運動協調を司るいくつかの脳領域の変性を反映する。しかし、このように典型的な神経症状が発現するはるか以前に、消化管症状が進行することが多い。その種の症状、とりわけ便秘は、パーキンソン病患者のおよそ80パーセントに見られ、その発症は、パーキンソン病の典型的な症状が現れる数十年前の場合もある。腸管神経系の神経細胞には、パーキンソン病の症状が発現する何年も前から変質しているものがある。それによって、腸の小さな脳の精緻な機能が損なわれ、蠕動は遅滞し、結腸を便が通過する時間が遅れるようになる。最近の研究が示すように、パーキンソン病患者のマイクロバイオータは、著しく変化している。パーキンソン病患者では、健常者と比べてマイクロバイオータを構成するプレボテーラ菌の割合が低下している。たとえば、マイクロバイオームの構成を変える菜食主義は、パーキンソン病発症のリスクを低下させる。また現在では、年齢を重ねると腸内微生物の多様性が低下し、マイクロバイオームが攪乱の影響を受けやすくなることが知られている。もしかすると、パーキンソン病は、通常60歳を過ぎてから発症するのも、そのせいかもしれない、という。

現在はまだパーキンソン病の原因は特定されてはいない。しかし、パーキンソン病の発症とマイクロバイオータの構成の変化が関係していて、かつまたマイクロバイオータの構成を変える菜食主義がパーキンソン病の発症リスクを低下させるのであれば、マイクロバイオータの構成の変化が原因である可能性は相応にあるといえるだろう。モハメッド・アリが蝶のように舞い、蜂のように刺すヘビー級チャンピオンだったころ、彼が後年パーキンソン病で苦しむことになるとは誰も思わなかっただろう。何もかもがすっきりと分かっている時代など永遠に来ない。そうであればこそ、中年を過ぎたならば、摂取する野菜の種類と量を増やすことを心掛けた方がよさそうだ。

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ボーッと生きて

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The Champion Single Sculls, Thomas Eakins, The Metropolitan Museum of Art

川は上流から下流へと流れ、そこに浮かぶすべてのものを海へと運んでいく。食品乳化剤は、低悪性度炎症が起こりやすくなるような方向へとマイクロバイオータの構成を変えていく。消化管の内壁にある粘膜層を破壊し、腸内細菌が近くの免疫細胞にアクセスしやすくなるようにもする、とされる。

UCLA教授エムラン・メイヤー著「腸と脳」(紀伊國屋書店)によれば、乳化剤は、水と油のように通常は容易に混合しない二種類の液体を混ざり合わせるよう働く。食品業界は、マヨネーズ、ソース、キャンディ、食パンなどのさまざまな食品に、安定化のためにたいてい乳化剤を加えている。乳化剤の添加は、チョコレートの場合にはソルビタントリステアレート、アイスクリームではポリソルベート、加工肉ではクエン酸エステルなどと、製品のラベルに記載されている。しかし、乳化剤の分子には負の側面がある。消化管の内表面を覆う、保護機能のある粘液層を破壊するので、腸内微生物が消化管内壁にアクセスしやすくなる。また食品乳化剤は、腸の内壁が形成する堅固な防壁を破壊するため、腸内細菌がそれを越えて近くの免疫細胞にアクセスできるようになる。これが代謝中毒症を引き起こしやすくする。また、食品乳化剤は、動物性脂肪や人工甘味料と同じように、腸などの内臓器官や、食欲をコントロールする領域を含めた脳の諸領域に低悪性度炎症が起こりやすくなるような方向へと、マイクロバイオータの構成を変えることが報告されている、という。

世界の三大河川といえば、ナイル川、アマゾン川、長江だが、低悪性度炎症を引き起こす三大食品は、動物性脂肪、人工甘味料、食品乳化剤ということになるだろうか。食品乳化剤が消化管の粘膜層を破壊し、腸内微生物が免疫細胞にアクセスしやすくなれば、サイトカインが生成されて身体の様々な領域で低悪性度炎症が起こりやすくなるということだ。狩猟採集時代のヒトは、動物性脂肪はさほど摂取できなかったようだし、もちろん人工甘味料や食品乳化剤とは縁がなかった。だから、現代の低悪性度炎症とも無縁であったろう。その代わり、医療や薬品にも縁がなかった。一方、現代のヒトは、低悪性度炎症三大食品を避けることは事実上困難だが、医療体制は整っている。自分がどういう特殊な時代に生きているのかを認識することは容易ではない。現代であれば、国家が禁止していないからとか、有名企業がよく宣伝しているからとかに影響されてなんでも鵜呑みにすると、あとで後悔する場合もあり得る。どの時代にあっても、自分の責任で、健康に配慮しながら生きることが長生きの秘訣であるのかもしれない。しかし、そういうこともすべて忘れて、ボーッと生きていきたいと思わないこともない。

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